双鶴・霊亀図 伊藤若冲筆 若冲と蕪村 図録解説
 右幅に霊亀、左幅に二羽の鶴を描く。画面いっぱいにふくらんだ鶴の体と、霊亀の尻尾が、白と黒のコントラストを成している。鶴は、卵のような楕円型の体から顔をのぞかせる。手前にいる方の体の向きがやや異なるものの、鶴の重なり方や脚の向きなど、「鶴図押絵貼屏風」(エツコ&ジョウ・プライスコレクション)の右隻第六扇によく似ており、「花鳥図押絵貼屏風(」個人蔵)にも類似性が認められる。霊亀は脚をふんばり、甲羅には六角形の筋目が何重も刻まれる。真っ黒なふさふさとした尻尾は炎の如く上昇し、そこから亀の霊気が放出しているかのようだ。見開いた白目の中心に黒目が打たれたその強い視線は、左幅の下を向く鶴と同じで、鑑賞者をまっすぐに見つめているのだろうか。霊亀は中国神話に出てくる巨大な亀で、蓬莱山を背負うという伝説上の生き物。
 両幅とも署名はなく、「藤女鈞字景和」(白文方印)、「若冲居士」(朱文円印)を捺す。

関連美術品
双鶴図(鶴亀図双幅のうち)伊藤若冲筆
霊亀図(鶴亀図双幅のうち)伊藤若冲筆