三美人図 勝川春章筆 図録解説
 それぞれに異なった姿態をとる3人の女性を表す。うつむき加減で立っているのは遊女と思われ、髪を横兵庫髷に結い、苧環と縞模様の打掛をゆったりと羽織って、右手で褄を取っている。長唄・浄瑠璃の稽古本らしきものを読んでいるのもおそらく遊女であり、打掛は黒字に笹模様、緋色地の着物には裾に白い飛鶴が見える。鮮やかな赤と黒の着物を画面左側に配し、右側にいる女性2人の着物の抑えられた色調とのバランスが上手くとられている。鬢を張り出さずに島田に結いあげた女性は芸妓のようで、渋い格子縞の着物、三味線を膝に置きキセルを手にしている。彼女の膝元には、煙草盆がさりげなく置かれる。3人は、1日の仕事を終えてめいめいに寛いでいるようだ。
 署名は草書の定家流で「勝春章畫」とし、印は「造化画中」(白文方印)を捺すことから、寛政初期、春章晩年の作品とされている。

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