前4―前2世紀頃
貼金銀
高13.2 cm 径15.5 cm
 この器の基本的な形状は、寸胴の器胎の末端が半球状になっている。これはギリシャのスキュフォス杯に類似しているが、圏足と把手を欠いている。外側に様々な人物を含む場面が描き出されている。底面貼金の地文には小さな8弁のロゼット文と刻点を施している。
 器側面に見られる長髪の人物(106頁、a)は膝までの短いチュニックを着、松明を右手に持ち、左腕に衣をかけ、左足に短いブーツを履いている。はだけた右側の胸の隆起から見て、女性であると思われる。彼女は犬を伴っている。この人物に向かって右回りに、上半身が裸形の右を向いて座る女性で、小さい有翼の人物を抱えている(b)。有鬚でライオンの毛皮に座りチュルソスを伴う人物はディオニュソスの表現と考えられるc。その右に座る長いキトンを着た女性の前に子供が立っている(d)。その右にはライオンの毛皮をまとい前脚の皮をヘラクレス結びにしている男性が正面向きに立っている。その両腕は下向きに広げられている(e)。その右に両手に衣を持って広げ、腿まで露わにした女性が、後の岩に寄りかかっているが、足にはブーツを履いている(f)。その右にはライオンの皮を敷いた岩にパンフルートを吹く男性が浅く腰掛けている(g)。
 底面の中心には8弁のロゼット文を配し、その周りに三つのブクラニア(牡牛の頭部)と三つの貝殻意匠を交互につけている。これらの図像の解釈は困難であるが、ブクラニアが供犠を暗示していることから、これが儀式に使われた可能性は大きい。

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