前4世紀頃
鍍金銀
高5.3 cm 径19.6 cm
この銀製の皿は、実物大のプラタナスの葉を鍍金でその中央にあしらい、簡潔で清楚な雰囲気を作り出している。葉の意匠は左右対称ではなく、自然の木の葉をなぞったものと思われる。ギリシャではプラタナスはソクラテスがその樹の下で哲学を説いたと言われる賢人の樹であり、川の神アケロウスの神聖な樹ともされた。バクトリアではオクサス川はゾロアスターがその川岸で天啓を受けたとされ、神格化されて水の創造に関わる神として崇拝された。タフティ・サンギーンからは、神殿に奉納された小アジア・マグネシアの川の神マルシャスを象った神像が見つかったが、このマルシャスの姿はソクラテスの姿にも通じるものがある。タフティ・サンギーンの付近にはマグネシア人の大きな植民があり、彼らはその慣習をこのバクトリアの地の川崇拝に転換したと考えられている。この器はこのマグネシア人の心象に大変近いものをもっており、灌頂を含む儀式に使われた器だったのではないか。
関連美術品
植物文杯