腕輪本体を形作っている管には、細部にこだわった繊細なクロワゾネ細工によって、比類のないほど美しい装飾が施されている。中心的なモティーフは、先端部装飾として使われているヤギ科動物の縮小版である疾走する有翼のヤギ科動物が描かれた、等空間のパネルで構成されている。さらにこの文様は、三角形の連なる装飾帯で縁取られている。本来双方の腕輪とも、その本体の大部分に象嵌が施されていたものと考えられるが、現在ではほんの僅かしか残っていない。それでも容易に、鮮やかな色彩と豊かさを備えた腕輪を思い描くことができる。
先端部の装飾としてこの腕輪を飾っている想像上の動物は、本体のもつ装飾性とは対照的に彫刻的な力強さを示す役割を果たしている。これは本体とは別に鋳造されたものであるが、管部分の一部として作られているように見えるほど非常にたくみに接着されている。しかし同時に、視覚的には腕輪から跳び出そうとしているようにも見え、飛翔している最中をとらえられた2頭の動物の姿でその活力が表現されている。さらに、管部分の装飾文様の中で表現された疾走する小型のヤギ科動物が、その疾走の最終段階に至って2次元的な姿から跳び出し、丸彫り彫刻になったという印象を与える。先端を飾るこのヤギ科動物の解剖学的な細部は、アケメネス期の動物表現に典型的な様式化された方法で細かく表現されている。翼は別に取り付けられており、表現はより装飾的である。翼や角や胴体には本来象嵌が施されており、その一部が現在でも残っている

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