この作品は銀で形成し金箔の象嵌を各所に施している。この器縁に施されたロータスと蕾あるいは樹木の連続意匠や、ペルセポリスの牡牛の柱頭にも見られる瞼を強調した表現、目頭から鼻面に向かう途中で分岐する血管の意匠はアッシリア由来のものと思われる。しかしその前方に揃えて差し出された前脚はライオンやグリフィンの要素であり、牛や羊など偶蹄類は通常前脚を折って表現されてきた。ダレイオスがスサの定礎石版に刻ませた銘文には、都の建設にあたって金細工師や象嵌細工師などを遠隔の地から集めたことが言及されているが、このような関連からも必然的にアケメネス朝の様式は多くの文化の要素を結合したものになって行ったのである。
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