この作品は緑泥岩を円錐台形の器にくりぬいて作られ、器外壁には双獅子が聖樹をはさんで向き合っている姿が彫り込まれている。樹木の部分に穿たれた紡錘形の穴には、今では白く変じたトルコ石が嵌め込まれており、生命力あふれる聖樹の葉を鮮やかな青い石で表現したものであろう。しかしこの双獅子表現は硬く、その鬣は襟巻きのような部分を含め大変様式化したものになっているのは、南、東イランといったおそらくライオンとあまり馴染みのない地域の職人が手がけたことを予想させる。この類の壷はメソポタミアの神殿宮殿址、王墓などから発見されており、南イランでは墓からのみ見つかっている。このことから想像するとこの美麗な器は葬儀や神殿の儀式に関連していたのであろう。

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獅子文様壺