蟹を円山応挙が、蛙を与謝蕪村が描いた合作。円山応挙(一七三三〜一七九五)は外来の写実的画法の影響を受けつつ、平明で装飾的な独自の画境を築き、日本の写生派の祖と称される。与謝蕪村(一七一六〜一七八三)は、芭蕉と並び称される俳人であるが、文人画界でも池大雅とともに双璧となるほどの才能を有していた。三匹の蛙は後ろ姿だが、配置のバランスが絶妙で、描かれない背中の隆起や足の肉付き具合までが表現されており、蕪村の生態把握力と俳句の構成力との結び付きが無関係ではないことを思わせる。応挙の蟹も卓越した写生力に裏打ちされての簡略化である。どのような意図での共演か分からないが、互いの持ち分を活かしあった画面からは、写生画文人画という境界は感じられない。往時の交流が偲ばれる作である。

関連美術品
蟹蛙図(円山応挙・与謝蕪村合筆)