飛天はインドの発生とされ、キューピッドなどの西方の神々が有翼であるのに対し、東洋では天衣によって飛翔する形態をとる。平安時代に仏師定朝によって作り出された飛天光背は,奈良時代の光背にならって,周縁部に飛天を配する。平等院鳳凰堂阿弥陀如来像の光背では各々雲上に坐しており、それ以降のいわゆる定朝様の飛天光の菩薩たちにも乗雲という形は一貫して伝えられる。しかし本像は,明らかに飛行のポーズであり、定朝が手本とした奈良時代以前の光背では,このように飛行の姿の菩薩が一般的だったことを考えると,この像は飛天光背の最も古い形式を伝えているとも推定される。大振りの目鼻立ちや大柄の体躯などは極めて古様であり,一一世紀にさかのぼる作とみられることから,飛天光背の成立に手がかりを与える一作ではある。体の反りには天下り飛翔する散華の姿の感がある。貼り付けられている背後の板は建築用材の転用であり,本像とは関係がない。
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飛天