王羲之は中国・東晋時代の書家で、中国第一の書聖と尊敬されている人物。右軍(ゆうぐん)の将軍となったことから、王右軍とも呼ばれる。
あるところで老婆が竹で編んだ扇(六角うちわ)を売っているのを見て、気の向くままにその扇を手にとって字を書いてしまった。老婆は怒った。そこで彼は、これは王羲之が書いたのだといって一本百銭で売れと言った。老婆が言われた通りにすると、うちわは飛ぶように売れてしまった。そこで老婆は、彼にまた書いてくれとうちわをたくさん持ってきた。しかし、今度は笑って取り合わなかったという。
この作品はそうした王羲之の人となりを表すエピソードのひとつを描いている。落款から天明七年(1787)、応挙55歳の作であることがわかる。
関連美術品
王右軍書扇図(円山応挙筆)