明恵上人は鎌倉時代初期の高僧で、行・学を積んだ碩徳として仰がれた。慈悲を旨とし、特に女人に厚く、山水、草木、鳥獣のすべてを愛した。上人は能筆、歌道にも通じ、また偶々栄西禅師から贈られた茶実を山中に植えて茶園(茶の本山)を開いた功績も大きい。本書状は建暦三年(1213)二月、「摧邪輪」という書物を證月上人慶政を介して貴人(九条道家)に進覧しようとしたものと思われる。

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明恵上人書状