江戸時代 18-19世紀
高:7.2cm 口径:8.2cm 高台径:3.8cm

全面に白化粧を施した上に,透明釉を掛けて本焼きしてから,緑の絵の具で上絵付けをしている。その際に,型紙を用いて白地を残すことによって,椿の花の輪郭を表現し,黄色の絵の具でしべを描き込んでいる。蓋の内面には,緑の絵の具の下に五角形が透け
て見えているが,これは化粧土の上に掛けた透明釉の釉層の厚さを意図的に変えること
により,あたかも段があるかのような視覚的効果を狙ったものである。
この作品のような緑地に白い椿の花を散らす意匠は,乾山焼にはしばしば見られるもので,手付鉢や数物の向付などに類品がある。しかし,「乾山」銘が蓋に書かれているのは珍しく,ほかに類例をさがすことは難しい。
銘自体は,かつて京都の三代乾山である宮田呉介の作品として紹介されたものに見られる銘の書体と類似している。呉介の銘は,江戸下向後の入谷時代の乾山の銘にならったものとされているから,いずれにしても乾山焼としては,かなり新しい時期のものであろう。 (尾野)

関連美術品
乾山色絵椿文向付