江戸時代 18世紀
高:5.2cm 口径:15.8cm 底径:5.8cm

型造りの向付で,器表面には型離れを容易にするためにあてられたと考えられる布の圧痕(布目)が残っている。銹絵で花弁の縁どりとしべが描かれ,全体に半透明の釉が掛
けられているが,外底部だけは露胎になっている。
乾山焼ではごく一般的な白泥を塗る手法も,この向付に関しては全く用いられていない。現在,京都の法蔵寺に所蔵されている鳴滝窯跡出土陶片のなかに,ほとんど同一の向付の口縁部破片が存在することから,この種の向付がすでに鳴滝時代には作られていたことが知られ,製作年代を考えるうえでの大きな手掛かりとなっている。
五客中四客に「乾山」の銹絵銘が施されているが,いずれも書体が極めてよく似通っており,同一人物の手によるものと推定される。銘は,くずしの少ない整った書体のもので,これは乾山焼の銘としては古相を示すものと考えられている。 (尾野)

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乾山銹絵百合形向付