南北朝時代 14世紀
絹本著色
縦:112.7cm 横:49.0cm

片膝をつき往生者を救い取るための蓮台を持つ観音菩薩。膝を軽く曲げ上体を往生者に傾けて合掌する勢至菩薩を先導に,来迎印を結ぶ立像,阿弥陀如来が雲に乗って来迎するさまを描いた作品である。

肉身は,三尊とも丹具の下地の上に金泥を掛けて表し,朱線で描き起こす。阿弥陀は条袈裟を着し,条部は丹具地に蓮唐草の金泥文,田相部は黄色地に雷文繋ぎの金泥文を加え,銀泥の暈を掛けている。こうした泥の多用は鎌倉時代以降の仏画の特色である。彫像を思わせる華やかな透彫風の光背も,やはり金泥で表す。

一方,両菩薩の着衣は丹具のほかに白群などの彩色も用い,これに金泥文を加えている。文様は雷文,青海波,麻葉文などで,いずれも鎌倉時代以降の流行文様である。光背は金泥の暈とし,来迎雲には銀泥を塗彩している。背景に群青を塗るのは,来迎図にしばしば見うけられる手法である。

本作品は宅磨澄賀筆の伝承がある。澄賀は近世の『本朝画史』にはその名が見えるものの,記録によっては勝賀と取り違えられたりしており,その実在は危ぶまれる。落款があるわけでもなく,単に仮託されたのだろう。制作時期としては,勝賀が活躍した鎌倉時代初期にさかのぼることはなく,南北朝時代と思われる。ただ,截金こそないものの金銀の特色を十分に生かしきっており,諸尊の表情が柔らかい点は見逃せない。

付属の書付や箱の朱印などから,明治時代には香川の松平家に伝わり,その後赤星家に所蔵されていたことが知られる。(泉)

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阿弥陀三尊来迎図