底部中央に窪み(オンファロス)があり口縁部が強く外反した金属製の飲用浅鉢は、アケメネス期(紀元前559−330年頃)の古代イランで広く作られた。この鉢は広い意味でこのようなフィアレーの範疇に入るが、装飾と製作技法が独特である。この鉢の外面は銀製アップリケで飾られている。このアップリケは、29個の小さな円花文からなる最上段の環状装飾、その下にあるライオンと戦うペルシア人の王族の姿をかたどった8枚の飾り板、17個の円花文からなるその下の環状装飾、そして9羽の座った鳥の列(現在は完全に失われている)で構成されている。戦いを表現したアップリケ(5個が残存している)は、8個ある中空の涙形突起(同じく5個が残存)と交互に配置されている。この涙形突起は、突起装飾のあるペルシアのフィアレーに典型的に見られるように打ち出しによって作られたものではなく、貼り付けられたものである。突起を打ち出すことによって作られる深い溝のある内面ではなく、平坦な内面を作り出すためにこのような細部の構造が選ばれたのだろう。
関連美術品
帝王闘争文様鉢