このペンダント付トルク(首飾)は一般的なトルクの形と違って下部の中央にペンダントがつき、首輪部分の下部は巾が広くなってカラー(襟かざり)状になっています。
通常の西アジアのトルクは、単なる装飾ではなく地位をあらわしたものであると言われていますが、輪の部分が比較的単純でその下部は多くの場合開いており、その両端には主に動物の装飾がなされています。
その典型的な例がエジプトの彫刻に表現されているものがあります。エジプトはダレイオスの一代前のカンビュセスの時代にペルシャに併合され、第27王朝はペルシャ王がファラオとして統治しました。
ダレイオス大王の時代に作られた、プタァホテプという名の男性がペルシャの衣装をつけている彫像の胸元を見ると、エジプトのペクトラルの上に典型的なペルシャのトルクを着けています。
トルクはペルシャでも高い身分や功績をあらわしましたが、この彫像の出土した墓の他の物証と彼の母親の名前から、プタァホテプは生前財務長官という高い位の人物であったことがわかっています。
アケメネス朝ペルシャは大帝国の展開に従って、このような局面をむしろ積極的に作り出し、このペンダント(ペクトラル)付きトルクに顕われているような意匠上の融合が行われて行ったのではないかと想像されます。
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