この銀杯の図像は上下二段に分かれ、上段は座る人物が8人、下段は明かに農耕の場面をあらわしています。
この銀杯に見られる牛の図像は、同地域の分銅にもたいへん類似したものが見られこの中央アジアの特徴を示しています。
上段の、衣をつけて座る一群の人物の姿は、同地域の石製婦人坐像、エラムの銀壺や石製神像・人物像等に見られる姿に近いものがあります。
上段には紡錘形の貴石を頭だけにつけた人物が、頭と頸、そして手首にもそれをつけ杯から何物かを飲んでいる人物の前に対面し、右手を内側に向けて頭に上げ挨拶をしている場面が描かれています。
前者の後には6人の無装飾の人物が続き、その中には献上物が入っているかと思われる四角い物体を携えている人物がいます。
これはしばしば饗宴の場面とよばれますが、実際に飲み物を口にしているのは場面のいちばん右の人物のみで、他の人物には口の表現さえもありません。おそらく彼等の至上者に対し捧げ物を行っている場面であると想像されます。
左に列をなす人物の最後部では到着間もないとおぼしき人物とそのすぐ前の人物とで、右手を頭にあてがう前述の特有な挨拶を交わしています。
この一群の人物は、右端の至上者に伺候する人々で、右から二番目の人物が至上者の次に身分の高い存在である事を暗示しています。
その下では牛に鋤を引かせ土地を耕す農耕の場面が描かれています。これらの場面を総合する時、当時何等かの組織化と分業の行われた階級的社会があったと想像されています。
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