地蔵菩薩立像 鎌倉時代 13世紀 重要文化財 木造彩色

地蔵は遠い将来に弥勒仏が現れて人々を救済されるまでの間、自らの業に苦しむ衆生の身代わりとなって現在の私達を救って下さる菩薩である。このような思いを昔の人も持っていたのであろう。お地蔵さんは常に身近な存在であり、石や木で様々なお地蔵さんが彫られてきた。
この地蔵菩薩像は、水晶をはめ込んだ鋭いまなざしが表情にはっきりした意志を与えると共に、一面どことなくやんちゃ坊主のような愛敬のある顔立ちをしている。平安時代後期まで、貴顕の気に入る美しい顔立ちの仏像を造立する事に専心していた彫刻界だが、このような写実的・個性的な像が制作され始めたのは、鎌倉の新鮮な空気に触れて起こった様々な展開のうちの一つである。
この像は、細かい木取りで制作された全体のプロポーション、衣紋のたわみの重さ、裾の自然な広がりと揺れに優れた彫技が見られる。衣に表わされた金泥・切金の文様6〜7種、更に彩色で表わされた数種の装飾は精緻である。彩色法は白土下地を置いた本格的なもので台座のバランスも良く、小像ながら鎌倉彫刻を代表する逸品と言えよう。

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